エルメスのCEOが語る 化粧品ビジネスとレザーの使用

エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の年次株主総会が6月4日に開催され、アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者(CEO)が化粧品事業の拡大、ワニなどの天然皮革の調達、そして中国市場での展開などについて語った。

化粧品事業については、「まずはメイクアップラインを2020年に発売する。準備が整った段階でまた詳細を発表するが、主要なラグジュアリーブランドは“3つの斧”を持っているので、メイクアップの発売は自然な流れだ」と述べた。“3つの斧”とは化粧品カテゴリーの柱である香水、メイクアップ、スキンケアを指しており、「エルメス」はすでに大きなフレグランスビジネスを抱えている。また、スキンケアもいずれは発表する計画だという。

メイクアップラインの詳細は明かされなかったものの、「“色”は当社の特徴の一つである」とその内容を暗示した。生産については、製品によるとしながらも、主にフランスとイタリアで行う予定だと話した。なお、同氏は化粧品の発売に先駆けて、利害の対立を防ぐためにロレアル(L’OREAL)の取締役を4月に退任している。

エルメスの18年12月期決算は、売上高が前期比7.5%増の59億6610万ユーロ(約7397億円)に達しており、香水はその約5%程度にすぎない。同氏によれば、一般論としてヨーロッパ市場は香水を、北米市場はメイクアップを、そしてアジア市場はスキンケア製品を好むという。「当社は化粧品事業においてもグローバルカンパニーでありたいと考えている。同事業を強化し、ほかの事業とのバランスを取りながら全体的に成長していくことが目的だ」。

「エルメス」といえば、その原点である革製品が有名だ。しかし近年は、動物愛護や環境保護の観点から生産工程を気にする消費者が増えている。バッグなどに使用されているワニ革の生産工程におけるワニの扱いについて、デュマCEOは「生産国よりはるかに厳しい規定を設けており、ワニなどの動物は農場できちんと管理されている。動物福祉は当社にとって重要なことだ」と述べた。これには同ブランドの定番バッグである“バーキン”の由来となった英歌手のジェーン・バーキン(Jane Birkin)が、製造工程でのワニに対する“残酷な扱い”を容認できないとして、国際基準に則った方法に改善されるまでは自身の名前をバッグから外してほしいと15年に求め、同社がワニ革の生産業者に対するガイドラインを厳しくしたという経緯がある。

なお、「グッチ(GUCCI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」を抱えるライバルのケリング(KERING)は、アパレル製品で使用するカシミヤなどの獣毛や、レザーグッズなどで使用する皮革などに関わる動物を対象とした動物福祉に関する新たな規定を策定し、19年5月に公開している。

天然皮革の代替品を使用することについては、「私は天然の皮革に愛着を覚えている」と話すにとどめた。また、「最近は農場の経営条件などのため、皮革の品質が落ちているようだ。当社の製品には高品質な皮革が不可欠なので、農場や皮なめし工場を定期的にチェックしつつ、場合によっては投資もしている」という。「当社は高いクラフツマンシップを誇っているが、それだけではない。当社の基準を満たす天然素材を探し、それを確保するべく投資していくことも重要な仕事だ。『エルメス』の製品は長く愛用されることを想定しているので、長持ちする素材であることも大切だ」と説明した。

ブレグジット(イギリスのEU離脱問題)にまつわる不透明感については「慎重に対応している」と述べ、混乱に備えてイギリス国内に在庫を蓄えていることを明かした。

重要な市場である中国に対するアプローチとして、同社は毎年新たな都市に出店することを掲げつつも、出店数よりも各店舗の質を重視する戦略を取っている。デュマCEOは、「12年から継続してきたこの戦略が奏功し、大きな成果を上げている」と話した。

中国でECに乗り出す際、多くのラグジュアリーブランドは中国EC企業のアリババ(ALIBABA)の完全招待制のラグジュアリーECサイト「ラグジュアリー パヴィリオン(LUXURY PAVILION)」や、JDドットコム(JD.com)のラグジュアリーECサイト「トップライフ(TOPLIFE)」と提携するが、エルメスは自社運営の公式サイトを18年10月にオープンしている。しかし、複雑な中国市場に対応するため、今後はそうした中国ECサイトとの提携も視野に入れているという。デュマCEOは、「公式サイトは予想以上の売上高とトラフィックとなっており、大変うれしく思っている。今のところ、ECと実店舗という中国での販売チャネルをうまく運営できていると思う」と語り、顧客層としては国内在住の中国人が増加していると付け加えた。日本でも19年6月にECサイトをリニューアルした。

こうしたECへの投資に加えて、同社は工房(ワークショップ)にも投資している。現在、フランス国内にはレザーグッズ専門の工房16カ所と、拡張が決定しているテキスタイル専門の工房を含めて42カ所があるほか、スイス、イタリア、イギリス、アメリカ、オーストラリアに合わせて12カ所の工房を構えている。

「H&M」 × 「ラブ ストーリーズ」 コラボレーション第2弾はスイムウエア

「H&M」は6月13日、アムステルダム発のランジェリーブランド「ラブ・ストーリーズ(LOVE STORIES)」とのコラボーレーションコレクション第2弾を発売する。「H&M」渋谷店、原宿店、新宿店などの限定店舗と公式オンラインストアで取り扱う。昨年発表したランジェリー・コラボレーションで反響があったキャンディーカラーやプリント、スポーティーカットなどの要素をスイムウエアに応用した。

 同コレクションは、1960~70年代のアメリカの社交界を撮影した作品で知られる写真家のスリム・アーロンズ(Slim Aarons)のプールサイドの写真と、アニメーション作家のコ・ホードマン(Co Hoedeman)から着想を得た。ダスキーピンク、ビンテージグリーン、タンジェリンをカラーパレットにレトロバンドゥー、三角ビキニ、オフショルダーなどをそろえる。ウエットスーツやベルト付きのワンピース水着は、伝統的なサーフィンスタイルから着想を得た。価格帯は1799〜5999円。タオル、サロン、バッグ、ビーチチュニックなどはアニマルプリントと洗練されたモノグラムを組み合わせてデザインした。「ラブ・ストーリーズ」の設立者マーローズ・ホーデマン(Marloes Hoedeman)が”完璧なミスマッチ”と呼ぶポップなカラーとデザインは、全アイテム自由自在に組み合わせることができる。

 ホーデマンは「『H&M』と再びコラボレーションをし、『ラブ・ストーリーズ』を世界中の皆さまにお伝えできるのは夢のようです。『ラブ・ストーリーズ スイムクラブ × H&M』は引き続きユニークなプリントとカラーで、サーフィンやカクテルタイムなど、楽しいサマーホリデーのためにデザインされています」とコメントしている。